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小学校英語JUNIOR TOTAL ENGLISH 学習者用デジタル教科書の活用の記録

神奈川県平塚市立真土小学校教諭
磯村 実紀

小学校英語JUNIOR TOTAL ENGLISH 学習者用デジタル教科書の活用の記録

[はじめに]

 今年度から文部科学省の実証事業で小学校英語の学習者用デジタル教科書(以下「学習者用」とします)が全小学校で使用されることになりました。今までは指導者用デジタル教科書(以下「指導者用」とします)を授業で使ってきており、「学習者用」は「指導者用」の解答機能を除いたものだということです。デジタル教科書が全児童の手元で操作できることになります。音声が要となる外国語科の授業では、これは非常に便利なことだと思います。ただ、今まで使用していなかったものを新たに使用し授業の方法を変えていかなくてはならないので、実際にデジタル教科書を活用し始めるときには、「ちゃんと使えるかな?心配だなぁ」と思うこともありました。

[使ってみて]

 「学習者用」を実際に使ってみると、授業するにあたって不安が解消されたり、手間だと感じていたりすることが軽減されたように思います。
 最大の不安は専門教員ではない私たちの英語の発音です。「指導者用」では児童の個に応じたお手本音声を随時出すことは難しく、児童が要望する音声は教師が対応せざるを得ません。しかし、「学習者用」があれば児童が必要とする音声を手元で聴くことが可能です。児童へのサポートという意味でも、一人ひとりの発声練習に立ち会って音声を示していくことは時間内にはとても無理ですが、これも「学習者用」である程度可能になります。
 「指導者用」を使う機能ではありますが、リスニング問題に挑戦させるときの書き込み用のシートを使用する際に、スクリーンショットで撮影したものをスカイメニューの機能を使って各児童に配布することで、教科書を集める負担や、プリントを印刷して配布する負担が軽減できたりすることも利点のひとつかもしれません。
 外国語科の授業とデジタル教科書は親和性が非常に高いように感じます。

[各Activityでの活用方法について]

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<1枚絵にはオプション音声も入っています>

 デジタル教科書を使い始めたときに授業の最初に「復習・予習」タイムをとり、一人ひとりの習熟度に合わせてデジタル教科書を用いて学習し、授業に臨むようにしていきました。機能に慣れてくると、発表準備の時間になると進んで「音の確認もしていいの?」「デジタル教科書使っていい?」と「学習者用」を学習に役立てる姿が見られました。音声という視覚的に残すことの難しい教科だからこそデジタル教科書は子どもたちが自分で学習する際のよりどころになるのだと実感しました。

1-WordList1

<巻末の”Word List”>

 この「復習・予習」タイムでは、児童の習熟度によって、主に単語や語句の表現を練習する子、文の表現を練習する子、レッスン冒頭の一枚絵の中にあるオプション音声を聴きとろうとする子などがいました。このように個に応じた学習が可能なことが一番の特徴であると思います。
 ただ、クラスによっては、「学習者用」を使うことで児童の興味・関心が英語以外のものに向けられる可能性があることも事実です。そこは注視をする必要があると感じました。
2-WordList2

<”Word List”はフラッシュカードとして使えます>

 機能として一番頻繁に使っていたのは”Word List”です。「指導者用」では、各クラスに配置されている大型モニターに映し、みんなで視覚的に単語を確認しながら音声を確認する際に役立ちました。とくに単語のまとまりごとに活用することができ、単元で扱いたい単語に注目して音声を確認することが可能です。この”Word List”はフラッシュカードのような機能があり、復唱しながら確認ができ定着をさせることにも役立ちます。
 「学習者用」では、やりとりや発表前の準備時間にとても活躍しました。子どもたちは、十分に聴き、慣れ親しんできた単語であっても、発表するとなると「発音が心配」という不安や「確認したい」という要望をもっています。その際、一人ひとりがデジタル教科書の”Word List”を活用して心配な単語を中心に音声を確認することができます。教師にとっても活用しやすい機能ですが、子どもたちにとっても発表前にとても役立つ機能でした。
3-Activity2

<児童の使いたい表現が含まれている場合があります>

 さらに”Word List”だけでなく、”Activity②”で、自分の意に沿った表現を繰り返して発声する活動の音声も役立ちます。ここで使われている表現が、児童の使いたい表現と合致すれば音声を繰り返し聴いて、うまく自分のものにすることができます。発表のための材料がデジタル教科書のさまざまな箇所にちりばめられており、それが児童の個別最適化をうまくサポートし、ひいては学習意欲の向上にもつながっていくと感じました。

4-Song

<歌にはイラストが変化するものもあります>

 ”Song for Lessons”のコーナーも活用しました。歌を聴くことができるということ以外にもメリットがあります。「指導者用」のコンテンツを視聴しながら、「学習者用」で自分の画面とも照らし合わせて歌を聴かせたり、口ずさませたりもしました。イラストが歌詞の内容に応じて変化するレッスンもあり、歌っている部分がどのような意味を持つのか、大まかにつかむことができます。また歌詞も表示させてカラオケのように歌っている部分が赤字で表示する機能は「読む」の指導とまでは言えないかもしれませんが、今後「読む」につながるよう意識させることができたのではないかと思います。「指導者用」の機能ですが、従来だとイラストを大きくカラーコピーして掲示物を作り黒板に貼り付けていたことが、モニターにさっと映せることで教師の作業が減ることもメリットといえます。
5-Sounds&Letters

<言っている単語が大きくなります>

 ”Sounds & Letters”を活用することで、フォニックスのような「音」もチェックすることができます。毎回ではありませんが、「指導者用」を使った後に、「学習者用」で児童に自分で聴く時間を与え発音練習をさせました。その後デジタル教科書の”Sounds&Letters”画面を使ってワークシートを作り、「指導者用」と併用して活用してみました。モニターを使って、音声と視覚情報で慣れ親しみ、ワークシートの中から発音された単語を選んだり、なぞったりと学習に活用していきました。
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<くり返しをONにすると確認が容易です>

 ”Activity ④・⑤”などのコーナーでは、音で慣れ親しんだ語句や文を書いてみる活動があります。書く順序、運筆のような動きも視覚的に確認することができるので、書くことに不安がある児童にとっても学びやすい環境を整えることができます。まだ書くことに慣れていない時期に、いきなりワークシートなどに書かせると躊躇したり、雑になってしまったりするので、初めに空書きをさせてみるとよいと思います。それに加えて「指導者用」と、各自の「学習者用」筆記アニメーションを流させて、下の[くり返し]ボタンを押してリピートして流すように設定すると、児童が書いている間は心配になったときにいつでも見ることができました。
6-LetsListen

<推測に役立つ”Let’s Listen”>

 ”Let’s Listen”では、ストーリーの場面イラストと音声の情報が同時に入ります。どういった内容で話をしているのかを聴きとる必要があるのでこのイラストが貴重な情報となります。この活動で私自身が授業の中で子どもたちに大切にしてほしいと思っていることは「推測」することです。スライドが切り替わりながら、会話が展開していき、聴きとれた単語とイラストの状況から会話を「推測」することが容易になります。よくアニメーションなどで動きをつけたものを見せるケースもありますが、これはかえって動きに注意が向ってしまうため音を聴くことに注力できる静止画の方が向いていると思います。ただし、最低限の内容把握のための動き(セリフが空白から表示されたり、音に合わせて絵が表示されたりする流れ)があり、注意をそがれない程度の補助があってとてもよいと思います。”Let’s Listen”は目標表現を含んだ単元のメインの音声表現です。「学習者用」を使って児童に何度も聴かせ、前出の「復習・予習」の時間などに積極活用するよう促しています。
7-WhereDoYouWantToGo

<画面にペンで書き込めます>

 個別の単元の指導では、6年生のLesson6 “Where do you want to go?” での道案内単元でよく使用していました。このレッスンでは、お互いに「学習者用」を用いて、地図を開き、道案内を行う活動をしました。紙のプリントを使って活動する場合には、筆記は楽なのですが、何度も書き足して線があちこち乱れてしまい、確認不能になってしまったり、消して訂正するのに大変な思いをせねばならなくて、英語を使うことに集中しづらい状況になってしまいます。「学習者用」を活用して地図上に線を書かせると、簡単に訂正、消去ができ、さらにペンの色を変えると前のものを残したまま2度目、3度目の活動も可能です。紙での不便さが解消され活動自体に集中できていたように思います。

[終わりに]

 以上、私自身の実践を踏まえた「学習者用」の活用について報告させていただきました。デジタルを使用することは、記録を残しやすいことや、後で検索・確認が容易なことなど、利点は多いと思います。ただ紙を使用するよさや、やはり紙でないと難しい指導内容もあると思っています。デジタルと紙をどのように利用していくことが子どもたちの学びにとってよいのか、実際にデジタルも用いながらよりよい併用を目指していくことが大切だと感じました。