教科書全体にかかわる内容
- 教科書では、単位の表記は原則として国際単位系(SI)に基づいています。SIでは、「時」は「h」、「秒」は「s」と表記しますが、これまでの教科書では生徒にわかりやすい「時」や「秒」の表記を用いてきました。しかし、H24年度版教科書の文部科学省の検定で、SIに沿った単位の表記をするようにとの意見があり、表記を変更しています。なお、弊社の教科書では扱っていませんが、「分」はSIでは「min」と表記しています。
- 教科書では、単位の表記は原則として国際単位系(SI)に基づいています。SIでは、体積の単位は「m3 」です。リットルはSIには属しませんが、SIと併用が認められていて、単位の表記は立体(ローマン体)の「L」または「l」と決められています。「l」は数字の1と紛らわしいため、リットルの単位を表記するときは「L」を用いています。
- H28年度版教科書の文部科学省の検定意見で、
という数式からから直接%という単位が求まるわけではない(求まるのは無次元の数値)と指摘され、変更いたしました。2年生の湿度を求める式についても同様の変更をしています。
中学校 科学1<第1学年>
- 教科書で用いる用語は原則として学術用語集に基づいています。学術用語集植物学編では「花弁」と表記されていますが,これまでは小学校との関連や,わかりやすさから「花びら」と表記してきました。しかし,H24年度版教科書の文部科学省の検定意見により,「花びら」ではなく,「花弁」に変更しています。
- 専門的には,合弁花類,離弁花類という分類が使われなくなってきています。それを反映して,太字から外しています。
- 「花」という用語は本来被子植物に用いられており,裸子植物の胚珠や花粉ができる器官を,「花」という言葉を用いてどう解釈するかは議論があるようです。以前の教科書では,雌花を一種の花序(花の集まり)と解釈する文献に基づき,「雌花の集まり」という表現を用いていました。しかし,裸子植物の「花」の解釈の問題や,雄花に対して雌花を「集まり」と表記することによる生徒の混乱を考慮して「雌花」に変更しています。
- 教科書で用いる用語は原則として学術用語集に基づいています。一般的には「浸食」という表記も見られますが,学術用語集地学編では「侵食」と表記されているため,教科書もこれに合わせています。なお,「侵食」である理由については,岩石や地層が水に「浸る」だけではなく,物理的・化学的な作用により岩石や地層が削り取られることを考慮し,土地を「侵す」という意味合いが適当であると判断されたようです。
- 長らく6500万年前と推定されていたため,そのような記述の書籍もありますが,現在は専門的に6600万年前と推定されています。
中学校 科学2<第2学年>
- 新教科書編集の過程で,鉄の酸化の実験の位置づけが議論になりました。酸化鉄の化学式を扱えないため,銅やマグネシウムの酸化の実験のように,詳しい酸化の現象を調べられるわけではなく,むしろ,鉄と酸化鉄の性質が異なることを意識することに向いているという結論になり,化学変化という概念を理解する題材としました。
- 日本化学会の提言をもとに,全社であつかいをやめています。
- 以前の教科書では,生徒のわかりやすさを考慮し,電気分解の電極を「+極,ー極」と表記していました。しかし,新学習指導要領では,電池のしくみの回路と電気分解の回路という,よく似ていますが,電極のはたらきが全く異なる内容を扱うことになりました。そのため,電池と電気分解の電極を混同しないように,電気分解では高校の表記に合わせて電極を「陽極,陰極」としています。
- 教科書では一般的な顕微鏡(上下左右が反転する)を例に説明してあります。 一部の顕微鏡で,左右は反転しても上下が反転しないしくみをとっていることがあります。
- 小学校では,植物が根から水とともに吸収される養分を「肥料」とよんでいました。しかし,「肥料」は,人が農作物にあたえる物質という意味合いがあり,自然科学では一般に使用しません。教科書でも「肥料」という言葉を避け,自然科学で一般的な言い方である「無機養分」としています。 なお,光合成でつくられるデンプンは「養分」とよんでいますが,書籍によっては「栄養分」とよんでいる場合もあります。「養分」,「栄養分」などの言葉には明確な区分けがなく,書籍や分野によって使い方が異なっています。
- H24年度版教科書の文部科学省の検定意見で,デンプンも糖の一種であるという指摘を受け,「デンプンが分解されて糖になる」という記述ができなくなりました。このため,「デンプンは,より小さな分子(麦芽糖)になる」と記述しています。
- H24年度版教科書の文部科学省の検定意見により,「脂肪はモノグリセリドと脂肪酸に分解される」としています。 一般的な脂肪(トリグリセリド)は,1つのグリセリンに3つの脂肪酸が結合したものです。モノグリセリドは,1つのグリセリンに1つの脂肪酸が結合したものです。以前は,すい液中の消化酵素リパーゼによって,脂肪はグリセリンと脂肪酸に分解されると考えられていました。しかし,近年の研究では,そこまで分解は進まずに,脂肪から2つの脂肪酸がとれて,モノグリセリドと脂肪酸に分解されることがわかったため,今回の変更になりました。
中学校 科学3<第3学年>
- R3版教科書から,「力学的エネルギーの保存」「エネルギーの保存」について,「法則」という言い方をやめております。ここでは,「エネルギーが保存される」という現象中心に学習するためです。学術用語集によると該当の用語は「エネルギー保存則」ですが,従来からこの用語は中学校教科書では使用されておらず,また,教科書では「エネルギーの保存」または「エネルギー保存の法則」双方の言い方が認められております。
- 日本遺伝学会の提言をもとに,全社であつかいを変えております。
- H24年度版教科書の文部科学省の検定意見で「遺骸を消費する消費者が分解者である」という基準が出されました.そのため「生物の死がいやふんなどから養分を得ている消費者を分解者といい,代表的な分解者は菌類や細菌類である」という意味の表現に変更しました。ダンゴムシやミミズなども分解者に含まれることになります。
- 日本化学会の提言にしたが,全社で扱いをやめています。代わりに「イオンの化学式」という言葉を使っています。
- 鉄を採用した理由は,亜鉛では銅の析出が顕著でない場合があること,また,亜鉛の場合,析出させても亜鉛であることを確かめる方法がないことです。Bの②のようにすれば鉄であることを確認できます。また,金属の塩化物の水溶液を取り上げた理由は,塩化塩の水溶液は,反応がはやいこと,探究2で塩化銅,探究3で塩化鉄を取り扱っており(3−3単元の第1章),同じ薬品を使うことができるためです。
- どちらも認められております。
- 従来どおり扱えますが,新指導要領解説の記述をもとに,電池の原理の説明はダニエル電池にしております。
- 仮に2種類の溶液を完全に別の容器に入れたとします。すると,最初の一瞬は電流が流れるかもしれませんが,すぐに亜鉛板(ー極)周辺の水溶液では Zn2+ の濃度が上昇し,銅板(+極)周辺の水溶液では Cu2+ の濃度が減少します。そのため,初期の状態と比べると,ー極側は+に帯電,+極側はーに帯電することになります。これは本来電子が動いてほしい向きとは逆で,電流が流れなくなってしまいます。 帯電のバランスをとるためのしくみが,セロファン(または素焼きの容器,塩橋)です。
- 電解装置を燃料電池にする際は、電極が水溶液に浸っています。このとき、陽極では酸素と電子と水からOH¯が発生してOH¯が水溶液中に増え、陰極では水素が水溶液中のOH¯と反応して電子ができ、電気が流れます。
このときの化学反応式は次のように表すことができます。
陰極 H2|NaOH水溶液|O2
陰極 (白金):2H2+4OH- → 4H2O+4e¯
陽極 (白金):O2+2H2O+4e¯ → 4OH¯
教科書ではこの陰極と陽極の反応をまとめて、
2H2+O2→2H2O
と表しています。