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はじめの一歩の一歩前

16歩目 1人1台端末環境を生かした教師の働き方改革の具体的事例(DXの視点から)

雲南市立木次小学校 大久保 紀一朗

チャットアプリを活用した情報共有

 1人1台端末環境において,教師も1人1台の端末を持ち,上手に活用することによって働き方を効率的に変えていくことが可能です。
 チャットアプリの活用はその一例です。無料で使える様々なチャットアプリがリリースされています。自治体や学校の実態に応じて,活用できるものを選択するとよいでしょう。これまでは職員室で紙で回覧を回したり,職員会議で口頭で伝えたりしていた情報が,一斉に全員に共有することができるようになります。また,これまでは紙面の情報しか共有できなかったものが,情報端末やチャットアプリを活用することでより幅広いメディアで情報が共有できます。例えば校務に役立つ動画のリンクを共有することで,口頭や紙面で説明するよりも分かりやすくイメージを共有することができます(図1)。
 このように,児童の情報端末の活用だけでなく,教師用の端末を校務に上手に活用することによって,1人1台端末環境を生かした教師の働き方改革が可能になります。

<図1>不審者対応訓練の計画に際して,動画リンクを共有してチャット上で協議している例 ph1


クラウドを活用したアジャイル型の指導案作成

 これまで学習指導案を作成する際は,一通り作成し終わった後に,指導案の検討会が開かれ,そこでの検討事項をもとに指導案を修正するというのが一般的でした。もちろんそこで学ぶことも多いのですが,「もっと早い段階でご指導いただけておけば,もっと考えを深められたのに。」ということも少なくなかったのではないでしょうか。
 クラウドを活用し,指導案作成の初期段階から多くの教員がコメントをし合いながら作成することで(図2),細かい修正を繰り返しながら,アジャイル型の指導案作成が可能になります。クラウドを活用することで,対面で協議する前に,クラウド上のコメントでやりとりをしておくことで,対面で検討する際に検討する内容をより焦点化させたり,議論を発展させたりすることが可能になります。また,指導案の作成者もより多様な意見を素早く取り入れ,指導案作成に取り組むことが可能になります。
 1人1台端末とクラウドを活用することで,これまでであれば,時間と場所が必要だった仕事を,クラウド上で効率化させていくことができます。最初はうまくいかないこともあるかもしれませんが,まずはとにかく試してみて,それからよりよい活用方法を模索してくことが大切です。
※アジャイル型…修正や変更が当然あるという前提で,細かい修正や変更を繰り返しながら徐々に物事を進めていく手法のこと。

<図2>初任者の指導案作成のためのメモに対して,複数の教師がコメントをしている例 ph2



三井先生
常葉大学教育学部専任講師
三井 一希

デジタル技術を活用することで,教師の働き方改革を進めやすくなります。情報共有のためのクラウドサービスやオフィス系のクラウドツールは操作も簡単で,誰でも使えるようになりました。最初は苦手意識を持つ教師もいるとは思いますが,使い続けるうちに慣れてきて必ず便利さを実感するようになります。GIGAスクール構想で整備される端末はクラウドの活用を前提としています。まずは教師がたくさん活用して,その便利さを実感してほしいと思います。