TEADA 2021/後期号
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●軽いものから少しずつ慣れるようにする●終わりの時間や回数を決める●周囲の人に強要しないようにする●自分の不安を周囲の人に話してみる出るときも右足から!!靴は必ず右足から!かぎ�かけたかな?しまい刺してそう…�繰り返しの行為に時間をとられたり,約束の時間に遅れるなどの問題が生じたり,心身が疲労して日常生活を送りにくくなります。また,家族を巻き込み,家庭問題へと発展する場合があります。例えば,手洗いや確認などがちゃんとできているかどうか心配で家族に何度も「大丈夫」と言わせたり,自分が決めたルール通りに家族も行動するよう強制したりです。家族は,要求に答えることが本人のためと思って対応しますが,要求はどんどんエスカレートし,ますます本人の不安が増幅する…という悪循環に陥ります。幼いうちは意識せず繰り返していても,年齢が進むと本人も自分の行動は「無意味だ」「おかしい」と感じるようになり誰にも相談できず,そのうち周囲の目が気になって行動範囲が非常に狭くなり,引きこもるケースもあります。自分で意識する前でも後でも,不用意に指摘することは避けなければなりません。治療には主に認知行動療法と薬物療法があり,両方を併用することが有効とされています。前者は,不安に駆られる場面で強迫行為をせずにいられるように少しずつ慣れていくといった心理療法です。例えば,汚いと思って触れないものを少しずつ触ってみる,物の配置がゆがんでいても見ないようにする,繰り返す回数や終わりを決めるなどで,不安の低いものから順に取り組んでいきます。最初は我慢することに苦しさを感じますが,次第に慣れてきて,不安感を減らして生活しやすくなるのが目標です。不安感を減らすお薬を使いながら認知行動療法を行うのが効果的とされています。宇野里砂先生医学博士・児童発達支援センター小児科医師・武庫川女子大学教育学部准教授。センターや保健所での乳幼児の発達,学童の発達障害の診療を担当。園・小中学校・支援学校・教育委員会等において教員・保育士・学校看護師対象に発達支援・医療的ケア児支援等に関する講演等を行なっている。本人へのアドバイス●強迫観念は,実際に危険が迫っているわけでなく,周囲の人が気をつけること●症状や行動を指摘したり,問いただしたりしない●症状以外で肯定的な行動をほめる症状の例として,下記のようなものが挙げられます。過剰な心配や勝手な判断は保護者との連携を困難にします。繰り返しの行動が気になる子どもに気づいたら,どのような行動があったのか具体的にメモしておき,家庭で気になることがないか尋ねましょう。この病気は誰もがふとした拍子に陥る可能性があるもので,本人や家族のせいではないこと,気づいたら早めに専門医に相談するとよいことを伝えましょう。一見元気な子どもでも,見えないところで心や身体の不調を抱えていることがあります。みなさんのまわりで,気になる子はいないでしょうか。このコーナーでは,心の不安定さからくる病気や症状,気質などを中心に,兆候や症状,対応の仕方などについて,医師の宇野里砂先生に解説していただきます。知っておきたい必要以上に手洗いを繰り返す■やスイッチを何度も確認する対称性や恒常性など配置に対するこだわりが強い脳が間違った命令を出している汚いと感じて,触れないものが多い何かをするとき,順序や回数にこだわる誰かを傷つけてしまうと思い,行動が起こせない12TEADA 2021 後期号FILE No.参考書籍:「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院どんな病気?自分の意思に反して繰り返し心に浮かぶ考えや気持ち(強迫観念)(例:自分の手が汚れているのではないか,■をかけ忘れたのではないか等)と,それによる不安や恐怖を打ち消そうと何度も繰り返す行動(強迫行為)(例:必要以上に手を洗う,戸締まりの確認で何度も家に戻る等)により,日常生活や対人関係がスムーズにいかなくなる病気です。繰り返しの行為によって一時的に不安は和らぎますが,根本的な解決ではないため,同じ状況が起こると再び強迫観念があらわれ,強迫行為を繰り返してしまいます。さらに強い強迫行為になることもあります。強迫行為自体は誰もが普通に行う行動の延長線上にあるため,神経質なだけか,こだわりが強いだけか,病気の症状かの線引きが難しく,また,子どもの場合,自分で違和感を覚えにくかったり,うまく説明できないため見過ごされたりすることもあります。しかし,ほうっておくと日常生活や対人関係に不利益が生じたり,重症化してうつ病などを併発したりすることもあります。50〜100人に1人が持つ病気で,そのほとんどが10代のころに発症します。成人期になると症状が軽くなる人が多いですが,軽快と増悪を繰り返す割合も高いです。WHO(世界保健機関)によって,生活上の機能障害を引き起こす10大疾患の1つとされています。日常生活への影響は?治療法は?気になる2どんな症状?保護者との連携は?強迫性障害(OCD)

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