GAKUTO 2020 特別号
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7コロナ禍に学ぶ学校教育 現場レポート 2020年の春、臨時休業中の児童の学力をどう保障していくか、暗中模索の日々が続いていた。 家庭でできるような簡単な観察や実験が伴う課題を出すことも考えた。しかし、児童を外出させるような課題は出せない。また、共稼ぎの家庭においては、日中の児童の学習へのサポートを期待できなかった。さらに、家庭学習用の教材を各教科で工夫すればするほど、児童や保護者に過重な負担をかける状況に陥ってしまった。 そこで、これまでの帰納的な展開の学習の展開を諦め、演繹的な展開の学習をベースに知識の習得を優先させることにした。そして、授業が再開された後に観察・実験の場を設定し、思考力・判断力・表現力、さらに技能の習得を図ればよいと考えた。 例えば、小学校理科の教科書は、次のような問題解決的な展開で編集されている。「問題をみつけよう→問題→観察・実験→(ページをめくって)→結果→考察→わかったこと」である。この展開に沿って、教科書を見ながら次のようにノートをまとめていく。(図表を入れて) 連日感染者数の増加が報道され、余談を許さない状態が続いています。一向に衰えることのない感染拡大の中、人の往来や経済活動を止めることができないジレンマに陥っていることも事実です。学校も同じです。地域によって感染者数、感染拡大の影響に差がありますが、各校さまざまな感染防止の工夫をしながら、子供たちの学びを止めることなく教育活動を展開しています。 本校でも5月に感染症対策3つの基本方針を示し、教育活動を行ってきました。分散登校が始まった6月は基本方針2に据えた「新しい生活様式」の確立を目指しました。登校時の手洗いの徹底、毎日の検温、マスクの着用など考えられる感染拡大防止対策を実施しました。特に登校時の手洗いは、現在、学校での生活様式としてしっかり定着しています。子供たちが自ら「密だよ。」と声を掛け合うようにもなりました。子供たちの学校生活が以前のものとは変わりました。 先生方もいろいろな行事や活動ができなくなる現状を「こうすればできる」と前向きに考えるようになりました。 まず、「問題」に対して「予想」する。次に、「観察・実験」を確認し、自分の予想が正しければどのような結果が得られるはずか考える。そして、「結果」を確認する。最後に、結果からどのようなことが考えるか「考察」し、「わかったこと」をまとめる。 机上での作業ではあるものの、およそ問題解決の過程をシミュレーションさせることはできた。 さらに、校内のネット環境を整備し、「Zoom」(web会議サービス)「まなびポケット」(学習支援プラットフォーム)や「Vimeo」(動画共有サイト)を導入し、教師と児童相互の情報を共有した。 学校での授業が再開後、ノートにまとめられた内容を確認し、実際に観察・実験する場を設定した。教科書の記述からは得られなかった聴覚・嗅覚・触覚に関わる情報が加わるため、観察・実験に対する児童の意欲低下は見られなかった。また、観察・実験に絞った授業であるため、時間的な遅れを取り戻すこともでき、活用場面の授業も設定できるようになった。 新型コロナウイルスの感染拡大は、大きな教育変革を私たち教師に迫った。その刺激が、新しい教育の可能性を引き出すインセンティブとして機能したことは、紛れもない事実である。運動会も全校児童が一堂に会するものではなく、2学年ごとの兄弟学年で種目を減らし、三部制にしました。一家庭2名の参観者とし、密を減らしました。子供たちの声がこだます雰囲気はありませんでしたが、上位学年の子供たちは、リードしていかなければならないという自覚が高まり、その後の生活にも変化がみられるようになりました。今までの運動会にはない別の成果が見られました。 今年度から完全実施となった外国語、外国語活動についても、先生方は自分やALTはフェイスシールドで口元が見えるようにしたり、Zoomを活用して外部講師とT.Tによる授業を展開したりと「こうすればできる」のアイディアを次々生み出しました。友達と会話をするなどコミュニケーションをとることが重視される教科では、机を2つ以上挟んで会話するなど教室の中でできる工夫をしました。 コロナ禍の中、各業態でさまざまな工夫、見直し、変更が行われています。世界中の人々の生活様式がかわってしまう中、その時の状態、環境に合わせて自らを変えていかなければならなくなっています。変化を嘆くのではなく、自らを変えて対応できるようにしていくこと、対応できる力。これがこれからの時代を生きていく子供たちに必要な力です。今、その力が試されています。小学校からインセンティブ筑波大学附属小学校副校長 佐々木 昭弘環境に合わせて変われる力東京都立川市立第十小学校校長 山﨑 俊英

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