GAKUTO 2020 特別号
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3コロナ禍に学ぶ学校教育 Special対談ていたところもあり、何とか対応をされていましたが、私たち教科書会社に問い合わせが多くなったのは、新学期に入って休校がさらに長引いてからであったと記憶しています。教科書をコピーして使ってプリントを作成してよいか等の許諾申請や著作権に関わるお問い合わせが多くなりました。学校現場では、やはり紙ベースの使用が多く、おそらく印刷物をポスティングで届けたり郵送したりして子どもたちに届けられていたのではないかと思います。 次第に、教科書を使った授業を配信したり、ソフトウェアを使って教科書を提示したりすることになり、その問い合わせが学校や教育委員会からも寄せられるようになっていったのは少し後になってからでした。デジタルに長けた先生方は、このようにデジタル教科書を利用したり、教科書のPDFを使って画面を作り配信したりする工夫をされていたと聞いていますが、やはり大半は紙の教科書を利用した対応が多く、このあたりから教育委員会や保護者から、これからもう少しICTを活用しなければいけないのではないかという話が出てきたのではないでしょうか。 確かに、こうした状況下で教材を配信し、子どもたちの様子を見ながら授業ができるというのは、ひとつの技術力ではあると思いますが、私たち教科書を作ってきた立場からすると、学習指導要領にも対話的な学び等が記されていますし、子どもたちが学校・教室という社会の中でお互いに関わり合うことをとても大切にしてきました。ですので、学校外でのオンライン授業では、そのあたりがしっかりと行えないのではないかという不安があります。もちろん、最新の技術では、オンライン上で子ども同士がグループになって話し合うことができる例も聞いてはいますが、やはりICTの授業ではなかなか十分にコミュニケーションがとれないのではないかという心配はあります。 今後教員養成の大学や学校現場での研究・研修をもっと進めて、授業におけるICTの役割をしっかり考えないと、ただ塾の授業をそのままオンラインで行っているような使い方になってしまうのでは、学校教育の意味が失われるというような気がしています。こうした危機的な状況下ではしかたないのかもしれませんが、もう少しICTをうまく使えるような研究と研修が必要になってくるのではないかと感じています。||今、「対話的な学び」という言葉が出ましたが、本来は、4月から小学校で新しい学習指導要領の完全実施が始まるはずだったのが、コロナに大きく影響されました。新指導要領の理念をどう具現化し、その中にどうリモート授業等を位置付けていったらよいのでしょう。若月 今言われたとおり、小学校で新しい教育課程が始まったわけですが、新しい教科書は、「主体的・対話的で深い学び」やICTの活用等の理念を前提とした学習指導要領に基づいて作られたわけです。デジタル教科書を使ってリモート授業を推進という前に、まずそこをしっかりとおさえることです。 教科書の中で、例えばこの単元では対話的な学習活動を中心に行おう、この単元、この時間では主体的な学びの力と姿勢を育てることをねらいとしよう、というように、それぞれの教科書発行会社は、紙の教科書を作ったときの編集コンセプトやねらいをもう一度洗い出して確認することが必要であり、教科書を使う先生方もそれをしっかりと理解することが大事なのではないかと思うのです。 デジタル教科書の活用、リモート授業の推進は、このような緊急事態の対応としては必要なのかもしれませんが、それだけではICT教育が表面的、技術的でその場限りのものになってしまうのではないかと思うのです。日本の教育の質を変えていく機会にしようするならば、どこでどんな学習活動を想定し、どのような力を育てようとしたのかという、教科書のコンセプトを再度見直すこと、そしてそれをデジタルのコンテンツ作りに活かしていくことが、デジタル教科書(教材)の活用、ICT授業の推進というステップへとつながっていくのではないかと私は思っています。芹澤 おっしゃるとおりです。教科書の中には、考えさせる場面、習熟を図る場面、などがいろいろと想定されています。例えば、ここでは話し合いを中心に授業を進めていただき、その後、習熟させる場面ではICTを活用しながら進め、やっていくうちにまた疑問が生まれたら学校の授業の中でみんなと共有して話し合っていく、というような、いいつながりができるようになっていけた今こそ、紙の教科書のコンセプトを見直すとき 学校図書株式会社 代表取締役社長 芹澤克明氏

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