GAKUTO 2020 特別号
21/32

21進む、デジタル教科書の活用 実践紹介❷進行することができました。音声を一度もミュートにすることなかったほどです。お互いに場所は違っていても、友だちや教員と交流を図ることができるように、グループの構成は都度、変えるようにも工夫を施しました。 ウェブ会議ではデジタル教科書も必要に応じて活用しました。遠隔学習の課題は、毎週配信されていて、日々勉強する項目が設定されています。ウェブ会議中に、教員PCから、デジタル教科書の画面を皆で共有して、国語であれば「ほたるの一生」の単元において、文中の大事なところにマーカー機能でポイント解説を行ったり(図1)、算数であれば「時こくと時間」や「長さのくらべ方やあらわし方」の単元で、時計ツールや、定規ツールを使って復習をしたりするなど、効果的に活用することができました。特に、デジタル教科書の拡大表示機能を使うことで、漢字の終筆(とめ・はね・はらい)の部分や、算数でのものさしや時計の細部をはっきり提示することができたのは有効に機能した点だということができます(図2)。リモートではあっても、デジタル教科書を活用することで、的確に解説することができ、また児童にとっても理解の一助になったものと、デジタルならではのアドバンテージを認識することができました。一方で、通信環境の問題から、表示しているデジタル教科書の画面の品質安定性の担保については課題としてあげられる場面もありました。また、算数の問題文の読み上げや、国語の物語文の音読など、音声を伴う学習活動については、遠隔学習だけではなく対面授業での一斉学習の場面が必要であるものと、特に低学年生での学習においては、これらの点も課題としてあげられるように思いました。 小学校1年生のときから、タブレット端末を文房具の一つとして活用しはじめて、2年目を迎えたときに、期せずして長期に渡る遠隔学習の機会がおとずれました。1人1台のタブレット端末の導入をしていたことが、遠3.おわりに隔学習を円滑に進められたひとつの要因であるとともに、学習支援クラウドアプリやウェブ会議ツール、そしてデジタル教科書の利活用が、特別なことではなく、教員・児童の双方にとって学習する機会を共有できる有効なものであることも本実践を通じて得られた知見ということができます。  長期に渡る休校期間中の遠隔学習の実践を通じて、今後どのような場面で効果的にデジタル教科書やタブレット端末等のICT機器を利活用すればよいか、どのように授業そのものが変化、そして発展していくかなど、アンケートや実践の記録、児童の感想などのデータを積み重ねて検討と検証を重ねていく必要があると考えています。 初めてのウェブ会議を終えた時に、保護者からは、子どもなりに普段と違う生活に不安や不満を感じていると思うので、Web会議で皆と繋がれることはとても有り難く感じましたといった肯定的なコメントをいただきました。また、児童からも、Web会議でクラスの友だちには会えていたから、その時間が自分にとって、とても大事な時間になりましたといった遠隔学習に前向きな感想を聞くことができました。 ICT機器を活用した遠隔学習が、児童をはじめ保護者にも身近な存在として、今後の授業でも使うことのできる文房具のひとつとして受け入れていただける、ひとつのきっかけになったといえるでしょう。 本稿で述べてきた小学校2年生のときの遠隔学習に関する実践のデータを礎として、さらなる教材開発と、授業研究を進めることを目標として設定して、今後も引き続きICTを活用した実践授業のデータの蓄積と研究を進めたいと考えています。▲ 図1:国語デジタル教科書「ほたるの 一生」▲ 図2:算数デジタル教科書「時こくと 時間」

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る