GAKUTO 2020 特別号
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18進む、デジタル教科書の活用 実践紹介❷小学校2年生のタブレット端末を活用した遠隔学習の実践についてリモート授業(小学校国語・算数)実践紹介 ❷慶應義塾幼稚舎教諭 鈴木二正 AI(人工知能)技術の発展により、将来の予測が難しい時代を迎えています。しかし、社会や時代が変わっても、慶應義塾幼稚舎(以下、幼稚舎)で学ぶ児童たちには、確固たる信念や自信とともに、柔軟性を兼ね備えた未来の先導者として、また、真の独立自尊の人として、学びを進めて欲しいと考えています。そこで、幼稚舎では、2018年2学期から学校として、情報通信技術、つまりICTの試行的かつ段階的な導入・活用を進めてきました。ICTを、新しい学びのしかけとして活用することで、学校、児童、家庭がつながる新しいチャンネルが一つ増えることになります。 ICTの活用のひとつは、新しい文房具として、児童1人1台ずつのタブレット端末を授業に導入することです。もちろん、これまでの「話すこと・聞くこと・読むこと・書くこと」などの基礎基本の部分は大切であり、教科書に沿った内容で進めること、副教材として辞書で調べることや、児童が手書きでまとめるといった実際の手作業に変わりはありません。ただ、授業中や家庭学習において、新しい文房具としてのタブレット端末を利用する機会や場面があるということです。例えば、理科、英語科、情報科といった専科授業での文房具としての利用や、クラス担任の担当している国語、算数、社会などの授業において、デジタル教科書の利用、調べ学習や発表ツールとしての利用、そして課題や宿題の提出・フィードバックなどでの利用を試行してきました。 理科では、既に地球を俯瞰できるアプリを使って川の上流・中流・下流の違いを観察したり、AIロボットを使った研究授業でも利用したりしています。さらに、貝がらの名前調べを図鑑とともに、タブレット端末でも調べてみる、実験や野外観察のときに記録として撮影に利用することも行っています。 英語では、自分のスピーチを録音・録画して、発音を自らの振り返りとしてチェックしたり、共有に活用したりしています。交流校であるハワイの現地校の生徒とタブレット端末で自己紹介や学校案内の動画共有の実践も行っています。動画共有アプリによる交流は、ライブ感に溢れ、世界との繋がりを実感できる貴重な機会となっています。 情報科の授業では、基本的な操作方法の授業を行うとともに、タブレット端末を使う機会が年々増えています。写真やビデオを撮影して短い映画を作ったり、プログラミングをしてロボットやドローンをコントロールしたりします。1人1台ずつのタブレット導入が始まったことで、よりその使い方に関するルールやマナーについての学習の重要性が高まっています。 クラス担任の担当している国語、算数、社会などにおいては、グループ学習、調べ学習の場面や、実際の発表時に、タブレット端末が効果的に使われている場面が多くあります。さらに、デジタル教科書の導入・活用とともに、課題配布・提出を支援する学習支援型クラウドアプリの導入により、学校での授業と家庭での学習がシームレスにつながるような新しい学びのスタイルが実践されています。 ICT活用の二つ目は、専用のWebサイト(ポータルサイト)の利用です。いわゆるBYOD(Bring Your Own Device)の実現を目指して、タブレット端末を家に持ち帰って、ポータルサイトにアクセスすることで、日程や献立、自分の読書記録、過去の漢字検定の問題などの確認にも使えます。また、本ポータルサイトには、お知らせ機能も備えており、全校児童・保護者への一斉通知や、学年ごと、クラスごとへのお知らせといった情報配信のためのプラットホームとしても利用することができます。 上述のように、幼稚舎では、2018年から新しい文房具として、タブレット端末を1年生から6年生までの全児童に導入しての、段階的な授業での試行をしてきました。当初は、児童各々の教室の充電キャビネットで管理して、校内のみでの利用からスタートしました。MDM(Mobile Device Management)によるタブレット端末の一元管理の態勢を整えるとともに、取扱いやルール、マナー面などについて、しっかりと確認し学習を積み重ねてきました。児童の授業での活用の様子を見て、セキュリティ面での準備も整えて、十分な試行を重ねた後、2019年4月からが本格的な運用と利活用(BYODを含めて)の開始と位置付けて進めてきたとい1.はじめに進む、デジタル教科書の活用2特集 G

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