GAKUTO 2020 特別号
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14進む、デジタル教科書の活用 実践紹介❶進む、デジタル教科書の活用2特集 G“普段使いのデジタル教科書”でできる授業改善校内授業(中学校数学)実践紹介 ❶札幌市立新琴似北中学校主幹教諭 山本敬一 指導者用デジタル教科書を使い始めて、かれこれ7〜8年になります。「動点Pが動いている様子を子どもたちに見せたい」が最初だったとように思います。昔は、磁石とプラスチックの棒とゴム紐で、動点Pが動いて三角形の面積が変化する様子がわかる教具を自作したこともあります。しかし、抽象的な図形の問題を具体物で表現するときの違和感も拭いきれないですし、教具作成の労力に見合うほど、図形をイメージする力を育むことができたのか不安でした。(生徒達は、喜んでくれたのですが……。) 令和の中学生は、私たちの世代よりも遥かに、デジタルの画像を見て理解することに長けています。指導者用のデジタル教科書『デジMATH』を使って、動点問題を説明するときの快適さと、生徒の理解の早さを体験すると、十年一昔の思いを強くします。 指導者用のデジタル教科書は、無ければ無いで良いものかもしれません。実際、私も「わざわざ、動点問題の説明をするだけのために、PCやらケーブルやらを準備するのは煩わしい。」と考えていました。 しかし現在、札幌市では、各学校に指導者用のタブレットPCが配備されています。教室にタブレットPCを持って行って、Wi-Fiで繋いで投影するだけで良いのです。これほど手軽なのであれば、これまで敬遠していた方たちでも、「無くても良いけれども、あるなら使ってみたい。」と思える環境が整ったのではないでしょうか。 私自身は、『デジMATH』を自前のタブレットPC(普段ネットには繋がない。)にインストールし、ワイヤレスで教室のテレビに映しています。『デジMATH』を使って授業をしていると、「実は、私も使ってみたかったんですよ。」とか「どんなことが出来るのか、触ってみてもいいですか?」など興味を示してくれる先生方が少しずつ増えていき、指導者用のタブレットPCにインストールし、同僚も一緒に使うようになりました。 今回は、同僚の感想も含めて、“普段使いのデジタル教科書”について、ご紹介できればよいと考えています。 私は、日々の授業で、基本的に『デジMATH』をテレビに映しっぱなしにしています。進度に応じて、ページをめくり、課題を拡大して表示しています。単元によっては、特に『デジMATH』上で操作をしないこともありますが、教科書紙面を一部拡大表示するなどすることにより、今どの辺りの勉強をしているのかを常に確認できるようにしています。 授業評価アンケートに「テレビに教科書が映っているので、授業がわかりやすい。」と書いてきた生徒が、各学年に複数いました。合理的配慮が必要な生徒の中には、(数学の得意不得意にかかわらず)現在取り組んでいる課題のページを開くのに時間がかかる生徒や、教科書のどの部分をみて良いのか分からない生徒も多くいます。そんな生徒にとって『デジMATH』で教科書紙面が常に表示されているというだけで、安心して授業に参加でき、「わかりやすい」と感じる要素になっていることに、同僚と共に驚きました。私達は、この1点だけでも、デジタル教科書を使う利点はあると考えるようになりました。 教科書の練習問題に取り組んだり、課題を解決するために個人思考の時間をとっているときに、生徒から質問されることがあります。その質問が、全体で共有した方が良い内容の場合や、授業のねらいに沿っている場合、あえて、テレビモニターに映し出された図や式を指さしながら質問を受けます。 すると、それをみていた生徒が「それって、こういうことじゃ……。」と自然に学び合いが始まることや、「あ、私も……。」と一緒に説明を聞こうとする生徒が現れて、授業が展開していくことが、しばしばあるのです。また、ペンツールで説明を記入した画面は、手軽にスクリーンショットを記録できるので、複数の考え方を比較・交流したりもします。1.はじめに2.指導者用デジタル教科書の利点とその効果❶ デジタル教科書は、いつも表示したまま (合理的な配慮・学習支援の手立て)❷ “学びのスピード感”を逃さない (学習場面の共有と思考の発展)

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