GAKUTO 2020 特別号
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11進む、デジタル教科書の活用 ICT活用の基盤づくりを進めようし、人々はむしろ積極的に自分の働く場所や働き方を選び取る時代になっています。職業も日々、新陳代謝をしていきます。このような時代では、「自分の道は自分で決める」という主体的で能動的な発想や行動力を備えていなければ生きていくことは難しいと考えられます。自分で何かを考え、行動を起こすためには情報が欠かせないため、自由自在に情報にアクセスできる力、その情報は信頼できるものなのかを多角的に吟味する力、目的や課題に応じてICTやメディアを駆使し、表現したりコミュニケーションしたりできる力が、どうしても必要になります。 PISA2018による読解力の低下も、日本の児童生徒に情報活用能力が身についていないことを証明した結果となっています。PISAの読解力は、①情報を探し出す、②理解する、③評価し、熟考する、です。②に関しては平均得点は安定的に高いのですが、①と③の平均得点が低下し、正答率が低かったと報告されています。これはまず、①インターネットを使って情報を探す学習が少ないこと、これに伴って、③情報の質や信憑性を判断する学習が少ないことが理由だと考えられます。教科書は担当者と検定を経て繰り返し、何度も確かめられた情報が載っています。しかし、社会生活を営む上では、不確かな情報を常に判断しながら、その妥当性や信頼性が問われています。教科書だけ使っていては、①も③も活動する必要がないため、取り組まれてこなかったのではないか、と考えられています。(図2)こうした理由も踏まえ、現在議論されている学習者用デジタル教科書では、学習指導要領がコード化され、様々な情報にアクセスできる仕組みに整えようとしています。 子どもたちに、様々な情報に自由にアクセスできる環境さえ与えれば、自然に自分たちで問題を発見し、どうすれば解決できるかと考えるようになるでしょう。もちろん教師のファシリテーションも必要ですが、これまでは、自治体の予算の制約などでそれが叶いませんでした。しかし、今回の緊急経済対策によって一人1台の情報端末が実現すれば、環境は一気に整うこととなります。GIGAスクール構想によって、我が国の学校教育の歴史的な転換点になることでしょう。 2020年度から実施が始まった小学校学習指導要領では、言語能力や問題発見・解決能力と並び、情報活用能力が学習の基盤となる資質・能力と記述されています。情報活用能力が身についていなければ、子どもたちはICTを学習の道具として上手に活用することはできません。そのためにまずは、学習者用コンピュータなどのICTを操作する力をしっかり指導して身につけさせる必要があります。  キーボード入力は必要な操作スキルの代表です。2015年に国が実施した情報活用能力調査によれば、小学校5年生の子どもたちはキーボード入力が1分間に導入前に準備できること▲ 図2:PISA読解力においての情報活用能力

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